1-3dropと初心者期間
時事ネタ反応シリーズその1。
定期的に話題に挙がる「初心者」についての話。
自分はどうだったかな〜、と思い出して文章化。
元々、遊戯王の競技プレイヤーをやっていた私(16歳)は、いろいろあって他のゲームを探し求めていた。
いつものオタクルーティンで立ち寄ったヨドバシカメラにポツンと置いてあった、「基本セット2014 デッキビルダーセット」。
(各色20枚ずつの基本土地と、100枚のカード+スタンダード6パックが入っている。)
「よくわからんが、火の玉とか出す芋っぽいゲームなんやろな」
そんなイメージを抱きつつも、なんとなくレジに持っていくアグロムーブを決め、マジックとの開墾を果たした。
家に帰り、箱を開ける、説明書を流し見して、パックを剥く。
「うわ、レアカード1枚も当たってねぇ…………」
パックを初めて剥いた感想はこれだった。
(他ゲーから移ってきたせいで、レアカードは光っているものと思い込んでいたのである。)
軽い失望を覚えた中、手元のカードをサンプルに、説明書をじっくりと読み込んだ。
カードタイプやマナの概念、コンバットとインスタントはよくわからなかったが、大方のルールは理解した。
しかし、何度読んでも説明書に載ってないタイプのヤツがいた。
こいつである。
駆け出し1秒のプレイヤー未満には、PWのシステムを理解するのは無理な話である。
説明がなければ見ても分かるわけもない。(WotCも初っ端からPW引くとは思ってなかったんだろうね。)
考えても無理だと悟ったので、ルールを教えてくれる人を探すことにした。
もちろん、突発的に始めてしまったので、周りに経験者はいない。
そこで横浜中のカードショップに電話して、「今からMTGのルールを教えてくれないか」と聞いてみた。
飛び込みでティーチングなど普通に考えたら無理な話だが、1店舗だけ対応してもらえるとのことで、カードを持って駆け込んだ。
(イエローサブマリン横浜店は最高のお店です
。)
眼鏡を掛けた声の高めな店員さんに、恐る恐る声を掛けると、作業の手を止めて、店舗の一角で質問を受けてくれた。
レアリティの見方から、構築のセオリー、大会を実施している店舗まで、なんでも教えてくれた。
PW(ジェイス)の強さについても教えてもらい、イゼットカラーのカウンターバーンからスタンダードを始めることにした。
後日、実際のプレイを勉強するために、組んだばかりのデッキを持ってプレイスペースに足を運んだ。
何組かフリープレイを楽しんでいる中で、大学生数人で固まっている卓に声をかけて、見学させてもらうことにした。
真摯にかつ、楽しそうにプレイしていたので、自然と安心感を覚えた。
何ゲームか座って観戦しているうちに、初心者ながらデッキパワーの違いを感じ取り、対戦はまた今度なんて考えていた。まさにその時、
「どんなデッキ使ってるの?」
質問されてしまった。
流れからすればこの質問は当たり前なのだが、初心者丸出しだったせいで、一抹の恥ずかしさや焦りを感じたことを覚えている。
しどろもどろになりながら、デッキを組んだ経緯や内容を説明していった。
ふむふむ聞いてもらったその後はもちろん、「じゃあ対戦してみよっか」
こうなる。
「さすがに強さが違いすぎて申し訳ないんで……」
と、用意していた逃げの台詞を言い終える前に、他のメンバーが初心者用デッキを買って来ていた。
プレイをしない人達がセコンドについたり、少しのハンデ貰ったりしながら、実際にマジックを遊ぶ楽しさを教えてもらった。
ひとしきり遊んだ後は、デッキの相談に乗ってもらい、フィニッシャー不足を解決することに。
そのままショーケースに移動して、おススメされた竜英傑ニヴ様と霊異種を購入。
別れ際には彼らが購入した初心者デッキやダイスを譲り受け、あまりの手厚い歓迎にちょっと嬉し泣きしそうになった気がする。
MTGを始めて最初の金曜日。
この日はFNMなるものに参加すると決めていた。
毎週金曜日に行われている、MTGの大会。
そう、大会である。
大会中、墓地は手札であり、ルールは相手を倒す武器、スリーブは厚ければ厚いほど相手がデッキを崩しやすい。
世界大会予選に出るためには、30戦30勝が最低条件となる厳しい戦い(もちろんイカサマ)。
何度しゃくられようと、1勝はもぎ取ってやろうという心意気で挑んで行った。
初戦の相手は、見た目がラクドス教団。
プレイマットは血の墓所で、ファッションやサプライは全て赤と黒で統一。
スカルのシルバーアクセが、アニソン流れる店内で輝いている。
※イメージです。
ゲームが始まる。
当時のカード知識は、M14とラヴニカへの回帰に偏っていたため、M13やイニストラードのカードはよくわからずとにかく打ち消した。
終盤の流城の貴族もキャンセルで打ち消した。
ショックは全て本体に打ち込んだ。
クソガバプレイながら、フィニッシャーの霊異種がなんとか着地。
数ある土地の中、山を1枚立てながら。
そこでラクドスの人はゲームを止めて、島を立てながら霊異種を出すメリットを、スタックの説明を交えながら教えてくれた。
ここで霊異種の強さに気付いたdrop。
大会中でありながら、相手の利する行動を取るなど、全く想像の範囲外。
初めて人の優しさに触れた悪役みたいな気持ちになった。
最終的には全敗でトーナメントを終えるのだが、時間の許す限りルールを教えてもらったり、会場の他のデッキについて解説してもらって過ごした。
初めてのFNMは、イメージとは裏腹に超フレンドリーでハッピーな空間だった。
それからは御多分に洩れず、FNM、ゲームデー、競技プレイとステップアップし今に至る。
6-7年経った今でも、この経験は何度も繰り返し人に話す。
それほどまでに、初心者期間は貴重で鮮烈。
誰にでも良い経験をしてもらいたいものだ。
だからこそ、この期間は難しい。
残念ながら、世の中にはショップで悲しい思いをする人が後を絶たないらしい。
何気ないアドバイスが、初心者の心を傷つけた。
大体のシナリオはこうである。
きっとアドバイスをした側に悪意はない。
純粋に上手くなるための手ほどきをしたのだろう。
しかし、自分の経験からすれば初心者期間に必要なことは、上手くなることよりもゲームを理解できるようになる事である。
ゲームを理解できれば、何が分からないか分からない手さぐりな状態から1つ視野が広がる。
視野が広がれば、自分が楽しめるポイントを見つけることができる。
向上心のあるプレイヤーであれば、自ずと上手くなろうとするだろう。
その時初めて戦略的なアドバイスが必要になる。
経験者が初心者と接する時には、相手が求めていることを慎重に探って理解することが重要なのだ。
イエサブの店員さんは、スタートの仕方を教えてくれた。
大学生の兄ちゃん達は、同じ目線でプレイしてマジックの楽しさを教えてくれた。
ラクドスの兄貴は、コミュニティの暖かさと強くなる方法を教えてくれた。
今思えば、それぞれ段階的に必要な要素を汲み取って、最適な教え方をしてくれていた。
ボタンの掛け違い程度のコミュニケーションエラーで悲しい思いをすることもあれば、深い感謝と共にどっぷり沼に浸かることもある。
どちらに転ぶかは、相互理解と伝え方次第だ。
沢山の新米PWが抜け出せない沼に落ちますように。
by ハマの口だけ番長